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信長主催の決闘祭典
織田信長とは、とにかく勝負事が好きな男だった。
全国から募集をかけ、「住んでいる国は関係なしに、腕に自信のある者は集まれ」と
毎年、織田家主催の【尾張決闘大会】という大規模な武術大会を開いていた。
内容は「年齢・性別・国・地域」を問わず、ただただ武に強き者たちが1vs1で戦うというもの・・・
侍、女性、忍び、外国人、どこの大名の者でも参加OKである。
信長は、この大会のためだけに約10億円の費用をかけ、清洲城前に派手で巨大な決闘場を造築した。
今宵も満月の下、その決闘大会は盛り上がっているようだ・・・
世も下剋上なら、決闘大会も下剋上・・・
突如、決闘大会に旋風を巻き起こす強者が現れた・・・
「グハハハハハ!」
二本の木刀で戦うこの大男。名は旭身志十念。
全国を周り、強き者との闘いを求めている浪人だ。戦場にも傭兵として戦に何度も参加している。
今、ちょうどこの決闘の3試合目に勝ったところだ・・・
奴は今までの試合相手を、それぞれ2分から3分ほどで片付けてしまった・・・
信長は一連の試合を決闘場の一番豪華な最上段の席から見物していた・・・
信長「ほう、あの男中々やるではないか・・是非とも我が軍に引き入れたい所だな・・・・」
木下藤吉郎(後の豊臣秀吉)は信長の傍で、旭身志十念に対して探りを入れるような警戒の目で見ていた・・・
藤吉郎 「殿、あの男は聞くところによると、ただただ修羅の道を行きたい戦好き・・・我が軍に入れば規律を乱すような乱暴者になり兼ねませぬ・・」
信長 「うむむむ・・そうか、しかしあの腕前をただ力試しの場だけで発揮させるのは惜しいのう・・・」
「おらおら!次に俺と戦うような強者、勇気あるものはおらんのか!」
志十念の腕前や凶暴性に恐れ、参加者、誰も名乗りを上げて決闘に参加しようとはしなかった・・・
「ったく・・臆病風に吹かれおって・・・」
「次の相手、拙者でいかがでござるか?」
突如、編み傘で顔を隠した若い女性のような人物が多くの強者参加者の中から決闘に
名乗りを上げた・・・
ザワザワ・・・どの参加者よりも小柄で細く、とても強そうには見えない・・・
審判員「おい、お主。大会者名簿に名を記載しておらぬだろう?参加者ではないならこの決闘大会に参加してはならぬぞ!」
大会を指揮っている信長の家来たちは名前を聞いても名乗らないその編み傘の人物を不審に思う。
志十念「よいよい・・誰も俺に勝負を望まなかった・・その中で1人名乗りを上げたその勇気を買おう・・・だが、容赦はせぬぞ・・・」
編み笠の人物 「結構でござる・・・・」
志十念は、所詮女子と高を括っていた・・・
だが、それは大きな間違いだと気づかされる・・・・
「うおおりゃ!」
志十念は、一発で終わらせてやろうと骨をも砕く十八番の【砕風】という
技を一振り!
だが、刀を降った場所にはもう、編み笠はいなかった・・・・
編み笠は宙を舞っており、攻撃態勢に入っていた・・・
上を見上げた宗十念・・・・・
編み笠の下から素顔が見える。女性のような美しい顔をしていたが、正体は男性だった・・・・
宙を舞う彼の姿は宗十念には、神のように見えた・・・
編み笠の人物 「静神流・奥義 撃神!・・・【砕撃炎】!! 」
静神流・奥義 撃神 【砕撃炎】とは
骨を砕き、2度と身体が動かないようにする技
骨が折れ、攻撃の衝撃で燃え盛る炎のような痛みが全身に行き渡る技だ
それを首元にもろに食らった宗十念・・・・
「ぐはあ!」
バキ! 首の骨が粉砕する音・・・・
宗十念の目は真っ白になり、骨が砕けた首はブランブランと正位置を失ったように揺れ
そのまま彼の身体は倒れた・・・・
宗十念は死んだのだ・・・・
木刀1つで・・・・・・
信長「おお!」
信長は、宗十念を一撃で倒した編み笠の人物を見て、喜びの声を上げた・・・
会場内がざわつく・・・・ザワザワ・・・
何者だ、あの編み笠・・・宗十念を一撃で殺してしまったぞ・・・
信長「藤吉郎!あの編み笠の者を余の所へ呼ぶのじゃ、我が軍へ入隊してもらえ!契約金をたんまり用意
してある、高い役職を与えるぞ!と言ってな。」
藤吉郎 「ははー!」
その時だった・・・・
「の、信長様!た、大変です・・・」
会場を警備していた明智光秀が血相を変えてやってきた!
信長「うん?どうした光秀、良い侍が見つかったぞ、お前も見るか?あんな小柄なのに数十センチも差のある大男を倒してしまったんじゃ。」
光秀「それどころではありません!清洲城までの山中の道のりに配置しておいた警備の者たちが全員、殺されているんです!」
信長「な、なに!何奴の仕業なのじゃ!忍びか?盗賊か?それとも獣なのか?」
光秀「現在捜索中なのですが、殺害された者たちには刺し傷、切り傷があり、相当手練れた剣士の仕業かと・・・」
秀吉 「と、殿!!!!・・・・」
信長「何事じゃ!!」
秀吉 「あの剣士が!・・・参加者や審判たちに刀を向け、次々に殺しております!」
信長が上から、下の参加者たちの様子を見る。
驚くべき地獄の光景がそこには広がっていた・・・・・
あの、編み笠の人物が日本刀をふるい、目にも止まらぬ鬼神のような速さで、観客や参加者や審判たちを次々に殺害していってるではないか・・・・
闘技場は真っ赤に染まっていってる・・・
「ぎゃあああああああ!!」 「助けてくれえええええ!!」
信長 「い、一体どういうことじゃ・・」
秀吉 「も、もしや奴が、警備の者を殺害した犯人では・・・」
光秀 「と、とにかく軍を出して奴の動きを封じましょう。」
3人の顔は恐怖で引きつっていた・・・・
ドス!ザン!ブシャアア!!
次々に決闘場に居る人々が殺されてゆく・・・・
あまりの強さに、腕自慢の出場者たちも途中から逃げ始めた。
織田軍がやってきた!
そして素早く数百人の織田軍が一斉に、編み笠の人物を囲む。
織田軍「貴様、何者!」
編み笠の人物 「・・・・・・・・・・・・」
織田軍 「神妙にせよ!信長様の城内で騒動を起こし、ただで済むと思うな!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
編み笠の人物 「近頃、各大名を騒がせている【国殺し】の話を聞いたことはあるでござるか?」
!!
国殺し・・・・
真っ黒な布で顔から全身まで隠した、恐るべき人物・・・
たった1本の剣で、1国に住む全ての人々を殺してしまう謎の暗殺者。
つまり、大名なら君主から農民に至るまで全てだ・・・
侍から一般市民に至るまで全て殺しつくして、国に誰も立っていない状態にしてしまう
恐ろしき死神のような人物
これまで、その国殺しと呼ばれる暗殺者に滅ぼされた大名は数知れない・・・・
織田軍「ま、まさか・・・貴様・・・・・」
編み笠の人物「ふん、これだけの人数ならわざわざ顔を隠す必要もなかろう・・・」
編み笠を外し、素顔があらわに・・・・・
編み笠の人物「そう、私がその【国殺し】です。」
編み笠の人物こそ【国殺し】だったのだ・・・・
女性のような美しい顔・・・・
刀からは殺害した人間の血が滴り落ちている・・・・
その姿は、まさに死神【国殺し】だった・・・
美しき【国殺し】は、遠く下から見上げ、決闘場の一番上から見ている信長に向かって、狙うように血にまみれた刀を向けた。
「織田信長殿、お命頂戴しに参った!いざ尋常に勝負せよ!」
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