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世界で一番嫌いだ
「……一真に感激してそれでなんの収穫もなく帰って来たと……貴様……なにをしとる」
「はい……大変申し訳ございません」
すっかり一真くんを誘うという目的を忘れていた私は、のこのこと教室に戻り桜さんにお叱りを受けている。そして……
「うん翠恋はまだいいとしよう。私が勝手に行けって言ったんだからな……そんで貴様は何をしとんじゃごらぁ」
「怒ってても可愛いね♡」
「黙れぇ」
そして波三谷くんは巻き添えです。
「うへっぶへっうぅっ」
おぉ……!
さっきからお化け屋敷の出口から出てくる子達が泣きじゃくっとる!!
いつの間にか列もめちゃ並んでるし……!
「お?あ?聞いとんのかおまえら」
「桜さん……!」
長蛇の列を指差すと、桜さんは「はぁ」と溜息をついて受付の席に腰かけた。
「とりあえず今からはちゃんと仕事してもらうかんね!!」
「よろこんで!!」「はぁーい」
意気込んだところで午前の部終了のアナウンスが鳴る。選手交代だ。
「あの!!わたし!!今から店番やります!!午前ほぼ仕事せずに一真くんを眺めてただけだしっ!!」
言葉にするとひどい!!
「じゃぁ俺もー」
「波三谷はやれ。翠恋はいい」
「え?どうしてですか桜さん……!私まだやれます!!働かせてください!!」
「そんなジ○リみたいに叫ばないでお客さんびっくりしてるから」
桜さんは私と喋りながら、お客さんからお金を受け取っておつりをテキパキと渡す。
「だって私ももう午後の部の人達来たら交代するし」
「あぁそっかぁ」
「だから翠恋一緒に周んぞ♡」
「俺も一緒に周りた」
「お前は来んな」
「わぁー」
「さ、さくらさ、さすがに言い過ぎでは……?!波三谷くん、波三谷くん元気出して!!」
「……いいんだよ、どうせ。一緒に周る女の子なんていっぱいいるんだから。私じゃなくても、いいんだから」
……ん?
あれ?
なんか、桜さん……すごく寂しそう……
「どけよ、お前ら。午後始まってんだけど」
いきなり背後から聞こえてきた低い声に心臓がビクゥッと飛び跳ねる。
こ、こ、この声は……ッ!!
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