世界で一番嫌いだ

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真心(まこと)……!」 どんどん離れていく後ろ姿。 一真くんが呼んでるのに……人が一生懸命、必死になって…… 「無視しないで……」 どんな気持ちか分かる? 「おい聞こえてんだろ止まれ椿真心ぉおォオ」 無視されるって、すっごく悲しいんだよ 『あのすみません社会のノートありますか……私日直なので今日集めないといけなくて……』 『ぎゃははは、それで?』 『そしたらさぁ――』 『……あのすみませっ』 『なんか言ってんぞ』 『あ?ほっとけよ』 話す価値もないって存在を否定されたような ――消えたい そんな気持ち、あなたには分かりますか? 分からないよね。 だからそんなことが嗤って平気でできる。 「なに」 振り返った椿くんの目は冷たい。 「一真くんが呼んでます!!」 「……俺お前みたいなのが世界で一番嫌いだ」 「消えろ」 グサグサグサァッ ゔ……おゔ……言葉の一撃が重い でも大丈夫 だんだん耐性がついてきた 「……っ」 めげずに視線を前に向けたその時びゅんと風が横を通り過ぎて僅かにスカートが揺れた。 前を向くと、一真くんがすごく怒っていて そこからは全部がスローモーションに見えて ただ、人を傷つけることなんて絶対しない優しい一真くんが人の胸ぐらを掴んでいる後ろ姿を 私は見つめていて 「…………」 動かなくちゃいけないのに動けなくて 涙で前がぼやけて なんでかな なんて言ってるか分かんないのに 私の代わりに怒ってくれたような気がして 違うかもしれないのにね だけどそれがなんていうか ……うまく言えなくて 「お!?おぉい!?椿!!一真!!なにやってんだやめなさい!!」 「せんせー桜めっちゃ傷ついたんでちゃんと叱っておいてくださいーあと翠恋も泣かされたんで仕事放棄しまーす。いこ。翠恋」 先生が来て廊下のざわざわは収まったみたい。 良かった。先生が来てくれて。でもあのふたり大丈夫かな。一真くん大丈夫かな。 「あんなやつこっちがお断りなんですけどぉ」 「あたし達が関わりたくねぇわくそが」 「翠恋わたしは世界一好きだよ」
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