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ノスタルジック イン ザ パーク
十一月●日水曜日
そろそろシャワーを浴びに行くかな、と自室のベッドから起き上がった二十三時五分。
幼馴染みの華ちゃん――君島華から、スマホへ電話がかかってきた。
『あのさ、白雪ちゃん。わたしの田久保君への片思い、応援するって前に言ってくれたよね?』
『なのに……白雪ちゃんも彼を好きってどういうこと?!』
『わたしのこと裏切ってたの?! キモオタブスなわたしじゃ、ギャルで美人な白雪ちゃんに逆立ちしたって勝てるわけないじゃない! ひどいよ、最低! もう絶交だからっ!』
私が通話をオンにするなり、華ちゃんは怒濤の勢いで文句を言うだけ言い、ブツンと電話を切った。
突然かつ身に覚えがない内容に呆然としつつも、電池の残量がピンチなことに気がついたので、スマホを充電器に差してから、これからとるべき行動について考えた。
とにかく確実に言えることは、私は田久保なんて全然これっぽっちも好きじゃない、ということ。とんだ冤罪で言いがかりだ。
彼女が何故そんな誤解をしたのかは分からないけれど、私は弁明のためにスマホを充電器に差したままリダイアルした――が、つながらない。
彼女は電話を切った後、スマホの電源を落としたっぽいな……と、自動アナウンスを聞きながら思った。
仕方がないので、誤解である旨をDMにしたためて送信し、憂鬱な気持ちで私は風呂場へ向かった。
十一月△日木曜日
朝、華ちゃんから返信は来ていないかとスマホを確認するも、返信どころか既読マークさえついていない状態だった。
私と華ちゃん、ついでに田久保も同じクラスなため、高校へ行きたくなかったが、母親に無理矢理家から出された。
重い足を引きずって教室へ入れば案の定、華ちゃんの怒りは継続中で、彼女は私を拒絶する空気をまとっていた。
挨拶をしたら返してくれたけど、それ以上は無理だった。
(華ちゃんの恋に協力しようと思ってとった私の行動が何か、誤解を受けた? 好み調査のために、田久保へちょこちょこ話しかけたりはしてたけど……。
てかさ、一方的に文句言って、こっちの言い分を全然聞かないってなくない? 勝手すぎんでしょ!
……でもそれくらい怒ってるってことだよね。滅多に怒らない優しい華ちゃんが今これって、相当だよね……。あー、どうしよ……)
内心穏やかでない化学の実験の準備中、何となく隣の班を見れば、田久保が私を見ていた。
奴は何が楽しいのか、意味不明にニヤニヤしていてムカついたので、全力でにらみ返してやった。
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