消える

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日本。東京。 古谷一太(ふるやいちた)はタクシー運転手をしている。高校を卒業してすぐに免許を取り、二十一歳で二種免許を取得した。この仕事は三年くらい続けているが未だに都内の道は覚えられない。ナビがなかったら仕事は続けていられなかったと思う。  夜の九時を回ったときに一太が高円寺駅北口のタクシー乗り場に車を停めていると一人の男性が近づいて来た。一太は後部座席のドアを開ける。男性は座席のシートに滑りこんで行き先を言った。十分も掛からないところだ。一太は車を発車させた。 「あれ、昨日の行きも乗せてくれた運転手さんですよね。朝の七時。覚えています?」 「七時ですか。あ、もしかして女性の方と二人で乗った方?」 「そうそう。青森に旅行に行くのでタクシーを使ったんだ。空港からレンタカーで色々回ってね。十和田湖のホテルに行く途中の山中に足湯があって二人で浸かっていたら、左側にいた彼女が忽然と消えたんだ。目を離して右の道路を見てた隙にね。山の中だったし歩いて下山できる場所じゃないんだ。僕は不思議に思って十和田湖のホテルの従業員に言ったんだけど、みんな首を捻っていたよ」
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