林檎

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 人工知能が世界を征服して数百年が経った。わずかな人類は、かつて人間が地球を支配していたことも忘れてしまった。このままで良いのか? いまこそ人間が力を取り戻すべきではないか? そう思った科学者は、人間たちの士気を高めるために、砂漠で遺跡の発掘を始めた。古代では人間が地球に君臨していた。AIを人間が使う側だったのだ。何日もかかって、科学者は遺跡をようやく掘り当てた。屋根のような四角い煉瓦状の板に積もった砂埃を払う。やがて刻まれた凹凸が見えてくる。古代人が刻んだ彫刻だろうか。科学者の胸が躍る。現れたのは林檎の意匠で、刻まれているのは銅板だった。
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