ベティは地獄の淵にいる。

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ベティは地獄の淵にいる。

『もしもーし、異星人さん、どこにいらっしゃいますかー?』  新しい惑星に到着したらまず、テレパシーを発信。それが、惑星調査隊が最初に行うことだった。  3XXXの地球。環境の悪化に伴い、生き残ることに成功したのはかつての半分にも満たない人間達のみ。それも、高い科学技術を発展させ、己の超能力を開花させ、あらゆる環境の適応できる強い肉体を持ち合わせた新人類のみだった。その新人類も、少しずつ数を減らしつつあるこの現状。新たな可能性をよその惑星に求めるようになるのは必然であったことだろう。  カーティスもまた、その“異星開拓使”に任命された男だった。今年で三十五歳になるイギリス系アメリカ人。強い透視の力、千里眼の力、そしてテレパシーの能力を持っている。尤も、テレパシー能力は新人類の殆どが持ち合わせているので、カーティスだけの特別な力というわけでもなかったのだが。  生命が生きている可能性のある星はごまんとあり、調査を行うには膨大な人員が必要となる。はっきり言って人手不足ということもあって、基本は危険度の低そうな惑星は小型宇宙船にて、二人一組で最初の探索を行うのが決まりとなっていた。カーティスが今回相棒として組んでいるのは、後輩のセオドアである。自分達二人でミッションをこなすのもこれで十二回目、実に慣れたものだった。 ――こんな惑星に、本当に知的生命体が暮らしてるのかね。  カーティスは宇宙服ごしに周囲を見渡しながら観察する。通称、惑星RX-1853K。右を見ても左を見ても、灰色の岩肌が続くばかりの惑星だ。確かによくよく見てみればその岩の間を、ちょろちょろと濁った小川のようなものが流れているようにも見えるが、それ以外に目新しいものが何もない星である。植物も人工物も何もない。水があって、気温が昼も夜も氷点を少し超えるか、超えないかくらいで保たれていることから生命が発展している可能性ありと見なされたのだろう。  確かに、生命体が発すると思しき特殊な磁場や、宇宙船の可能性がある光がいくつもこの惑星に着地するのが撮影されてはいるが――だからといって、この惑星そのものに人が住んでいるとは限らない。自分達と同じように、異星人が調査に来ている可能性なんていくらでもあるのだから(実際、調査任務の折に異星人と遭遇することは珍しくないのである)。
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