ベティは地獄の淵にいる。

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『もしもしー、異星人さんいらっしゃいませんか?どこかにいるなら、返事をしてくださいー』  もう一度、広範囲にテレパシーを飛ばす。やっぱり駄目かな、とカーティスが思った次の瞬間だった。 『聞いたことのない声だ。思念通信ができるのか?お前達は誰だ』 「!」  テレパシーに、誰かが返事を返してきたのである。やや低い、少年の声のような印象を受けた。カーティスは慌てて意識を集中させる。テレパシーが飛んできたのは、ここから見て二時の方角だった。しかも達、と言ったということは、彼はテレパシーを飛ばしたカーティスのみならず、後ろで待機していたセオドアのことも認識していた可能性があるということである。 『俺は、カーティス。カーティス・アーチャーという者だ。太陽系第三惑星、地球からやってきた。地球の、アメリカという国の人間だ。この惑星に生命がいる可能性があると睨んで調査に来たところだ。君達と敵対するつもりはないし、侵略するつもりもない』  やや早口に情報を流すと、声の主は少々沈黙した後に“分かった”と返事を返してくる。 『……地球。書物で昔、読んだことのある星だ。確か確かお前達の単位では……大体我々の3モルスが、1ヤードに該当するのだったか。ならばそこから南南西に1500ヤードくらいの場所に、我々がいる施設がある』  なんと親切にも、こちらの単位で教えてくれた。地球って実は異星には有名なところだったりするのだろうか、なんてことを思う。そういえば、前の調査で出会った異星人も、“地球か、いいところだよな!”なんてフレンドリーに話しかけてくれたのを覚えている。いやはや、AI搭載の翻訳機様々というものだ。 ――1500ヤードか。思ったほど遠くないな。ボードを走らせればすぐだ。 「セオドア、ちょっと行ってくる。地球に報告入れておいてくれ」 「わかりました」  そして、探索用のエアボードを組み立てると、ひとっとびに走らせてテレパシーが来た方角に向かった。――後にそれを、酷く後悔する羽目になるとも知らずに。
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