ベティは地獄の淵にいる。

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 ***  驚いたことに、その場所には、空気のドームが出来ていた。この惑星は酸素が殆どないのだが、どうやら大気中の窒素やアンモニアなどの成分を酸素に変換し、空気のドームを作って生活圏を維持することのできる技術がある者達がいるらしい。  水色のドームの中に入れば、宇宙服がなくても快適に呼吸ができた。しかも、気温も十度前後に保たれていて比較的快適である。中には無機質な灰色の、四角いビルのような建物がいくつも立ち並んでいた。どれもこれも窓がなく、殆どドローンのような形の小さな機械が飛び回っているだけで生きている生命体らしきものは見つけられなかったけれども。  その一番中心にある、野球場のような形の丸いドーム状の建物。テレパシーは、どうやらその中から飛んできていたらしい。やや重力が弱いため、歩いていても体がふわふわする。転ばないように気を付けつつ、ドームに近づいていったカーティスは入口の文字を見て眉を顰めた。装備した言語翻訳サングラスのおかげで、異星人の文字も即座にAIが解読してくれる仕組みになっているからである。  そこには確かにこう書かれていた――赤ん坊生産工場、と。 『その建物の正面に入ったら、右へ。……左のエリアには行かない方がいい。我々の主人たちが寝泊まりしている場所だから』  テレパシーに言われるまま、カーティスは右の廊下を進んだ。そして、すぐに気分が悪くなることになる。どの部屋も、牢屋のように柵で仕切られており、その中に何人も異星人らしき者達が捉えられていたからだ。意外なほど、彼らの外見は地球人によく似ていた。違うのは、どの異星人たちも白い肌に青い髪、尖った耳を持っていることだろうか。誰も彼も、地球人でいうところの小学生から高校生くらいの男女に近い見た目をしていた。見慣れない異星人の姿に、目を丸くしながらこちらを見ている。 「お前か」 「!」  その牢屋の中の一つから、声がかかった。はっとして振り返れば、地球人の感覚で言うところ、中学生の少年くらいの外見に見える――青いボブヘアーの異星人と目があった。 「え、えっと……俺を呼んだのは君?」  声をかけると、その青い髪の少年は頷いた。 「そうだ。ベティ・ロックハート。惑星イクス・ガイアの民。惑星ファラビア・テラの者達に飼われている者の一人だ」  ベティと名乗った彼の腹部は、不自然なほど大きく膨らんでいた。
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