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千年もの昔。ファラビア・テラというとてつもない軍事力を持つ惑星が、イクス・ガイアに戦争を仕掛けて勝利したのだという。テラの惑星は環境汚染によって崩壊する寸前となっており、彼等がより資源が豊富で環境の整った惑星を求めていたためである。加えて、選民思想の強すぎたその惑星国家の住人達は、近親相姦を繰り返したことと環境悪化により数を減らしており、特に深刻だったのは女性の数が極端に減少してしまったことだったのだそうだ。
ゆえに、テラの民はガイアの民を全て捕虜とし、自分達の子孫繁栄のための奴隷として飼うことにしたのである。
ガイアの民にも男女の性別は一応あるが、実際のところ身体的な機能は地球人の女性とほぼ変わらないものだというのだ。というのも、過去には地球人と同じような生殖行動をして子孫を増やしていたのが変化、相手の体液を摂取するだけで男女問わず全ての民が子供を産めるように進化して言った結果なのだという。
よって、少年のように見える外見のベティも(本人には一応男性という自負はあるらしいが)、実際持っているのは女性器のみで男性器はない。ようは、胸の無い女性のような体だと言えばいいだろうか。セックスなんてなくてもキスで子供が作れるのだから、男性器を持つ人間が必要なくなったのである。ファラビア・テラの民がイクス・ガイアを狙ったのも、つまりはそういう理由だった。資源が豊富であるだけではなく、その惑星の住人達そのものが自分達の子孫を増やすのに最適な母体であったからである。
「この惑星・ラクマも。昔は緑あふれた土地であったのだ。それがファラビア・テラに根こそぎ奪われ、破壊尽くされた結果このような姿になってしまった」
ベティは座ったままゆっくりと首を振った。お腹が大きいので立つのが辛いのだろう。やせっぽっちの少年に見える体に妊婦の腹というのが、地球人のカーティスからすればあまりにも違和感のある姿だった。
しかし、腹が大きいのは彼に限ったことではない。同じ部屋にいる髪の長い少女に見える人物も、その後ろのベッドに座っているツインテールの幼女に見える子も、壁に背を預けて立っている長身の青年も。みんなみんな、多かれ少なかれ腹が膨らんでいるようだった。ここでは、それが当たり前なのだ――カーティスは背筋が冷たくなるのを感じた。
「今は、この惑星に定期的にファラビア・テラの住人が来て、我々と生殖行動をしたり、あるいは生まれた子供を母国に出荷して連れていく。……ここでは、そういうことが毎日のように行われている。我々は生殖能力の高い種族だからな、体の負担を鑑みなければ、一日程度で子供を産むことも可能だ。長期的に子供を産み続けることを考えるならば、三か月から一年の時間をかけるのがベストだが」
「……ベティって言ったな、お前。お前は、この場所に来てからどれくらい過ぎたんだ」
「わからない。お前達の単位でどれくらいになるのだろうな。八十イヤリー……百二十年は下らないだろう。イクス・ガイアの血を保つために、ガイア同士で交配させられる者と、テラの民の子を増やすためにテラの民と交配させられる者がいて、私はその後者であるというのはわかる。私も、私の母も、そのまた母もみなそうやって生きてきたのだ」
「それは……それは、痛いこと、じゃないのか?苦しくはないのか?」
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