あなたのいる場所

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 エアロックのインジケーターは黄色く光っていた。  最低限に与圧されており、呼吸可能な空気が循環しているが、いくつかのパラメーターが正常な値にない。  そういう意味だった。 それ以上の情報は、仮にここからハッキングしたとしてもわからない。    考えても仕方のないことだった。  私はエアロックを開いた。背後の扉が閉じ、チェンバー内に空気が満たされる。普通ならこの時点でヘルメットを外すものだが、さすがにそんな不用心なことはできなかった。私は船外作業服の腕にとりつけられた端末を操作し、紅楼夢の3Dマップを呼び出した。空撮画像と公開されている情報から組み立てたものだ。ジェネレーターや、水や空気の再生装置、宇宙船という法律上のたてまえを通すためのスラスター、エンジン、そういうものはどれも標準的な形をしている。居住モジュールや多目的モジュールに関しては、外観からだけでは何の施設かわからない。  ひとつ怪しいと思ったのは、赤外線センサーで見たとき、不自然に高い熱を帯びていたモジュールだった。単純に発熱している何かなのか。あるいは、冷却する必要があって放熱しているのか。  いずれにしても、これは人探しだ。  ここで、娼婦として働いているファビオラ=アンテローニを見つけ出し、店員と交渉し、身柄を買い受ける。  エアロックの内扉に青いサインが灯った。  エアロックを抜けた先も、しかし狭い小部屋だった。  すぐ目の前に扉があり、施錠されている。  右手の壁が開き、棚が現れ、合成音声が貴重品と武器を預けるように促す。  船外作業服の端末の機能のいくつかがロックされた。  そして扉が開いた。    赤いものが視界に飛びこんできた。                      
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