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頭蓋骨の中にあったのは、積層ニューラルチップだった。
これはファビオラ本人ではない。クローンだ。
こうした特殊な娼館で、クローンの女を使うのはよくあることだった。
終戦直後の混乱期ならともかく、市民コードのある女を連れてくるのは困難が多い。
クローンなら、最速、通常の八倍の速度で成長する。外見も、設計段階でいくらでも作りこむことができる。
ただそれは、肉体の話だ。シリンダーの中で成長したクローンは、脳に十分な刺激が与えられず、十分な知能や自我を得ることができない。シリンダーから出た直後は、歩行さえおぼつかない。
だから、普通に自我のある、十分に発達した人間の脳を、ニューラルチップにコピーするわけだ。
娼婦にそんな手間とコストをかけるのは馬鹿げたことに思えるが、あいにく、紅楼夢は普通の娼館ではなかった。
あたりまえのように斧が転がっていることが、それを証明している。
満足させようとすれば法に触れる特殊な欲望と、失えない地位と十分な支払い能力を持っている男は、たくさんいる。
女の首を絞めながら犯したい。
七歳以下の少女を強姦したい。
女の腹を切り裂き、そこに一物を突っ込んで射精したい。
女の両腕両脚を切り落とし、身動きできない状態にして、死ぬまで凌辱し続けたい。
わかりやすいのは、たとえばそんなところで、そうした男(男とは限らない、とイフラースは言っていたが)たちの欲望をかなえるのが紅楼夢なのだ。
だからどうしても、紅楼夢の娼婦は使い捨てになる。
それも、覚悟ができていたり、絶望していたり、ドラッグで朦朧としていたりしては駄目なのだ。
健全な自我を持った女を回復不能にまで破壊したい。
それが、客たちの求めるものだからだ。
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