いつもの日常/理玖の場合

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 こういうのに慣れているのかどうなのか、翔は目的地のホテルまで無言でスタスタと先を歩く。もうここまでくれば翔が俺に興味がないのは一目瞭然だった。どんな奴だって初対面だとしても何か会話をしようと歩み寄ろうとするものじゃないのか? ここまで素っ気なくされたのは初めてで、正直腹も立ったけど寂しくなってしまった。  調子狂う……  俺は翔の後姿を見つめながら足を進める。  容姿には自信はあったんだけどな。俺は翔のタイプじゃなかったのかな。何か気に触るようなことも言った記憶はない。というか、会ってからろくに会話も交わしていない。 「なあ、翔さん。ちょっと待ってよ……歩くの早くね?」  思わず翔の服の裾を引っ張り引き止めてしまった。振り向いた翔の顔を見て胸がキュッとなる。そんな冷たい顔しなくてもいいじゃんか。 「ああ、ごめん。そんな顔すんなよ」  俺は今、どんな顔をしているんだろう? 翔に言われ首を傾げる。急に腰に手を回されて「ごめんな」ともう一度謝られた俺は、何故だか胸がドキドキした。  ホテルに着き部屋に入る。こんな気不味い雰囲気で男とホテルに入ったのも初めてだった。これから俺はどうしたらいいか考える。いつもならホテルに来た時点で相手はやる気満々だから言われるがままに行動すればよかった。でも翔は俺に興味がない。部屋に入ったところで翔は何を言うわけでもなく勝手に冷蔵庫からビールを取り出して一人で飲んでいる。それでもここに来たってことはそういうことだろうと思い、俺はシャワールームへ向かった。 「どこいくの?」 「え? シャワー浴びてくる」  突然声をかけられそう答えると、翔は自分の座ってるソファーの横をポンポンと軽く叩き「必要ない」と俺を見つめた。前回シャワーは済ませて出てきたとはいえもう一度セックスするなら気分的に最初にシャワーを浴びたいんだけどな……そんなことを考えながら、俺は素直に翔の隣に腰掛けた。 「……しないの?」  俺が隣に座っても何もしない。翔が何を考えているのかわからなくて不安になる。何をされているわけでもないのに、何故か体の奥が疼いてしまってしょうがなかった。  気にしていなかったけど、もしかしたら翔は「α」なのかもしれない。数はかなり少なくなったとはいえ、まだこの世には半数近く「第二の性」を持つ者が存在しているのだから……
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