スウェロニア家の宝

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スウェロニア家の宝

「オズ。手紙ありがとう。いつも救われていたよ」 「忙しい合間にたくさん送ってしまって迷惑ではなかったですか?」 「そんなことはないよ。嬉しかった」  屋敷の玄関で荷を下ろしたハイリの背が高くなっているのを見て、ぼくはつい丁寧な言葉遣いになってしまった。寮に入ってから半年も経っていないのに体つきが大きく変わった気がする。ぼくの頭一つ分大きくなったハイリを見て、いよいよ騎士の道を歩み始めたのだと今更ながらに気づく。  奥様への挨拶に行ったハイリを横目にぼくは晩餐会の準備に戻った。今日は夏季休暇で戻ってきたハイリの近況報告を兼ねて一族総出の夜会が行われることになっていた。スウェロニア家の夜会には何度か使用人として参加したことがあるが、非常に規模が大きいことだけはわかっていた。  ハイリの父上のウィル様のご友人が多く参加するからだった。ウィル様はスウェロニア家の一族の中で過去最高に位の高い王の近衛兵の団長として働いている。  それに……とぼくは食事の配膳をしながら思う。前回の夜会には貴族のお嬢様もたくさん来られていた。皆、若君であるハイリの妻になるべく10代の頃からアピールに余念がないのだ。ハイリは容姿端麗、頭脳明晰。非の打ち所がない少年なのだ。  かくして夜会は夜通し行われた。ハイリの周りには騎士族の娘たちで円ができているほどで、ぼくはそれを遠くから眺めていた。
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