スウェロニア家の宝

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「……オズ。泣いているのか?」 「え?」  ぼたぼたと頬を伝う熱いものに自分で触れてみてようやくわかった。ぼくは泣いていた。ハイリは珍しく驚いた顔をしてぼくを見つめた。そして、黙って頭を撫でてくれた。その手つきは初めて出会った頃と変わらずに温かかった。 「怖い思いをさせた。ぼくにはああいう敵も多い。それを伝えてこなかったのはオズには平穏に暮らして欲しかったからなんだ。ごめんよ」 「ハイリが謝るのはおかしいっ。ほんとはぼくが悪いのに……」  そうぼくが叫ぶとハイリがぺしっ、と頭を軽くこづいた。 「おまえは何も悪くないよ。だから泣かないで」  いつのまにか号泣していたぼくのことを、ハイリは腕の中に閉じ込めてくれた。そこがぼくの世界が平穏である庭の広さのように感じられて、より辛くなった。ぼくは守られなければ生きていけないのだろうかと思うほどに、胸が苦しくなった。  ハイリ襲撃の事件は瞬く間に一族の間に広がった。ハイリの父上は怒りに震えて賊の首領を探すよう私兵に命を出すほどだった。母上はショックのあまり一週間ほど休養を取られるほどだった。  ぼくは自分の不甲斐なさに打ちひしがれ、ハイリが夏季休暇を全て使い尽くすまで顔を合わせられないでいた。そして、ハイリとの別れの日が来てしまった。
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