53人が本棚に入れています
本棚に追加
「……そうなのですか?」
にいさまの言葉が信じられずに答えを待つ。
「そうだよ。オズはぼくの心を癒してくれる。それができるのはこの世でオズだけだ」
その言葉に体が打ち震えた。衝撃は頭に広がり、次いで体に広がった。
こんなにも完璧な人なのに……ぼくを必要としてくれる。
「また、泣きそうな顔をしているね」
頬を撫でられ、ぼくははっとした。泣くなんて情けないこと、したくない。ぼくは奥歯をぐっと噛んで込み上げてくるものを耐えた。そして、この休暇中ずっと悩んでいて心に決めたことをハイリに言った。
「にいさま。ぼくも騎士になります。騎士になって、にいさまを守ります。一生かけて守ります」
「オズ……」
今度はハイリが驚いた顔をした。心の底から驚いているようだった。
「ぼくはにいさまの盾となり、剣となります。だから待っていてください」
「ああ……待っているよ」
最後にわしゃわしゃと頭を撫でてくれたにいさまの手のひらの温かさをぼくは2度と忘れない。
その日からぼくはその身をにいさまに捧げることを誓った。たとえぼくの一方通行の思いだとしても、にいさまの誇れる弟になりたいと思った。
最初のコメントを投稿しよう!