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「まあ見習いなんスけど」
あっけにとられる遠藤をよそに、若者は淡々と説明した。
実は、あの曲自体が魔法の呪文のようなモノで、最初から最後まで聴いた人にだけかけられる。
今回の魔法は異世界に飛ばす魔法だから、遠藤はどこか行きたい世界はあるか?と
突飛な話に、目が点になる遠藤。
「いや、まあなんかよくわかんないけど頑張って」
そう言って帰ろうとする遠藤の腕を若者は笑いながら必死で掴んだ。
「いや、なんでもイイですから。言ってみてくださいよー」
「痛い、痛い、痛い、力強いなお前!……わかった、わかった!…じゃあ、カワイイ世界…誰でもカワイイもの当たり前に持てる世界に行かせてくれ!」
そう言うと、若者は腕を離して、また指をさしてきた。
「オッケーで〜す」
すると、若者のニヤっと笑った顔が、渦に吸い込まれるように歪みだした。
そして、そのまま一瞬にして消えてしまった。
突然のことに慌てふためく遠藤。と、周りの風景も若者の顔と同じように歪みだした。
歪みと比例するように、遠藤の意識もだんだん遠のいていった。
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