2.その名はアリス

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2.その名はアリス

 少女の名は有栖(アリス)といった。今年から小学生になったばかりで、独り歩きさせるのもまだ危なっかしい少女だ。  入学式の日、ママのレイに連れられて学校に向かっていると、歩道に大きな黒猫がいるのを見つけた。  「コンチャ」 とアリスは言葉に出さずに考えだけを送った。 「ぉ?おお、しゃべられるのかよ」 と黒猫は驚きながらも返してきた。もちろん声には出していない。 「ふふっ」 とアリスは一人で笑った。 「何がおかしいの?」 レイには今のやり取りは聞こえるハズがないので、当然のようにアリスに聞いた。アリスは、 「なんでもなーい」 とだけ答えた。  アリスはつい最近、猫とは会話ができることに気づき、猫を見つけると片っ端から話しかけていたのだった。  猫以外でも、犬や虫などの声が聞こえる時があり、その度にアリスは考えを送っていたのだが、ちゃんとした会話になったことは未だなかった。  アリスは猫と話ができることが楽しくてならず、家にいる時はクロやシロが話し相手になっていた。  ただクロ達は仕事でヘトヘトな時も多く、そんな時はクロが室長(パパ)に、 「アリスが最近やかましいのよ」 等と苦情をいう場面もあったが、パパはまさかアリスとクロ達が話せるとは思わなかったので、聞き流しておいた。  
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