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ココは母親と猫のイチローと一緒にアパートの一室に住んでいた。ココが2歳の時、父親と離婚したと母親は言っていたが、ココには父親との思い出はなかった。母といってもまだ30歳を少し過ぎたばかりだ。
ココの母は、生活のために昼間はスーパーでパートをし、夜の仕事にも出ている。
最近になって母親に男ができ、一緒に住むようになった。男は仕事もせずに母親に金をせびってはパチンコに毎日行っている。
夕方には毎日酒を飲み、パチンコに負けた日には母やココに当たり散らすような典型的なダメ人間だった。
ある日パチンコに大負けしたのか夕方に戻った男はココにいきなりビンタをした後、
「お前が悪いんじゃあ!」
と叫びながら、何度も何度も蹴り続けた。
母親が買い物から帰った時、ココはぐったりとしていて動けなくなっていた。
男を咎めた母にも、男は容赦なく暴力を振るった。母は夜の仕事の出勤時間が近かったので、買い物袋を放り出して、その日はココをおぶってそのまま仕事に出かけることになった。
…………
翌朝ココが目を覚ますと、全身の痛みがひどく立ち上がることもできない。母親は仕方なく学校を休ませた。が、病院に連れていく事はしなかった。男から固く止められていたからだった。医師が虐待の疑いを持つと、必ず警察に通報されることを男は知っていた。
男は母親にココを外に出さないように言ってからパチンコに出て行った。
母は迷った。このクズみたいな男と一緒にいれば、自分どころか娘まで危険にさらされる。しかし、このことを警察沙汰にすれば、後でどんな報復が待っているかと思うと、何もできないでいた。
ココは翌日も体調がすぐれず休ませた。体中にあったアザも、だいぶ目立たなくなってきている。ココには悪いと思ったが、母親は女として生きる道を選んだ。
翌朝、アザはだいぶわからなくなっていたが、母親は念のため、ファンデーションを塗ってアザを消し、ココには
「学校でこのことを話してはダメよ」
と言って娘を見送った。
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