第二夜

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昔々のお話 ナザリア王国は小さな小さな国でした。 心優しい国王と妻の間にはそれはそれは美しい 完璧な容姿の女の子が生まれました。 ただ一つ銀髪という髪の色を除いては。 セレスティアが生まれ落ちた瞬間、ナザリア王国の美しい空は暗黒に包まれ、ぐるぐると黒い雲が集まり魔王が現れました。 「銀髪の娘を貰い受ける」 人間と交わした条約の為、魔王がそう言うとセレスティアが生まれた部屋の窓が開きました。 セレスティアの母は魔王が部屋に入る瞬間 我が子に魔法をかけました。髪が黒くなる魔法を。 「銀髪の娘はどこだ」 「なんの事ですか?今生まれた我が子は黒髪です。見て分かりませんか?主人と同じ黒髪。 まさか条約を破りただの子供を盗もうと言うのですか?」 魔王が抱かれている赤子を見ると確かに黒髪だった。染めたり、偽ったりする時間は無かった筈だ。 「ちっ、、、条約は守れ、、銀髪は必ず我が元に捧げる事だ。破ればお前らは皆殺しだ」 「分かっております。生まれたら必ず捧げましょう。ですがこの子は違います。お帰り下さい。」 魔王は納得いかない顔をするもその場から消えた。 そりゃそうだ。この世界で魔法が使える人間なんて存在するはずが無かったんだから。 セレスティアの母は魔族の血が流れている混血だった。通常、人間と魔族の間に子は出来ない。けれど銀髪と魔族の間には子がなせる。 生まれてくる子はそれはそれは強い魔力を持ち 生まれてくると言う。だがしかし銀髪の髪は人間同士からしか生まれない。だからこそ魔族は銀髪の人間を欲しがり自分達の種族を強くして繁栄させようとしたのだ。 セレスティアの母は何百年も前に銀髪と当時の魔王から生まれた子供の子孫である。ナザリア王国は逃げてきたその子供を匿いその子孫に至るまでずっと魔族に隠し通してきたのだ。 たった1人、人間で魔法が使えるセレスティアの母は自分が死ぬまでセレスティアの髪の色を偽り続けていた。本来なら生まれてくる筈が無かった銀髪を魔族にバレぬ様に必死で隠していた。 今もお城やセレスティアの部屋を守り続けていられるのはセレスティアの母がかけた呪いが残っているからだ。 そしてセレスティアの母が病気でこの世を去る前、その力を譲り受けたのがアルテミスだった。どうやって譲り受けたのか、何故アルに力を渡したのか私達は誰も知らない。
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