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ゆらりゆらりと、不安定な印象を残しながらも、安定したピアノの音が聞こえる。風に揺られるように、まるでワルツを踊るかのように、流れるように鍵盤の上を滑る手。たゆらかなメロディーと、聳え立つような低音が、透明感を保ちながら関わり合う。
『エリーゼのために』
今まで聴いたことのないような、透明感に溢れ、重々しくも軽々しい印象を与える美しいエリーゼ。包み込むような音色。優しく語りかけるような弾き方。ほんの一瞬、聴いただけで、人々を魅了させる天使のような音色。
弾いてるのは誰か。気になり、思わず走り出す。
ピアノの音以外、なにもないただただ静かな音楽室に、堂々たる存在感を示して響くのは、虚しく悲しく美しい『エリーゼのために』。
ーーーその演奏は、ただ美しい。それだけの、一言に尽きた。
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