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すっかり緊張が解けた春名と夏原がキャッキャと話していると「みなさん、ご迷惑を」と部屋に楡が入ってきた。
「楡くん、お疲れ様」
「楡空佐、お疲れ様です」
一直線に夏原と春名の前に来た楡は2人の頬を平手打ちした。
パンッパンッ
と音が響き、部屋が一瞬静かになる。
「ごめんなさい」「ごめんなさいっ」
夏原と春名が肩をすくめる。
「どうして軍の敷地になんて入ってきた?」
夏原はテーブルの上にあるくしゃくしゃになったハンバーガーの包み紙を凝視している。
春名は手を太ももの上でぎゅっと握り身体をかたくする。
「お前たち6Cの飛行場で補講を受けてたんじゃないのか?」
「はい…」
「そこからどうやってここに入ってきた?」
楡の声は厳しい。
パンッパンッ
ともう一度2人の頬を楡がひっぱたく。
「夏原!」
楡が怒鳴ると夏原はビクンと身体を震わせた。
「はいっ…補講のあと、川に行って遊んでいたら…北の空にTMEが見えたので…見に行きたくて…」
「川?川のどの辺りで遊んでいたんだ?」
「二本松の橋のところです」
「それから」
楡は厳しい声で続きを促す。
「それから…旧校舎の裏をまわって…」
夏原はチラリと楡の表情をうかがってみる。
楡は眉をこれでもかと吊り上げていた。
旧校舎の辺りは行ってはいけないと教えられている。
「それから」
楡の声は先程より明らかに不機嫌になっている。
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