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大きく足を開かされた夏原は、尻を打たれるのを覚悟して精一杯背中を反らせる。
夏原の真っ赤な尻が上を向き、どうぞぶってください、と言わんばかりにピンと張っている。
「よろしい。」
瀧はわずかに口角を上げた。
コトン、と木の板を机に置いて部屋の奥に歩く。
春名は少し首を起こして瀧の様子を見てみる。
部屋の奥にある棚にはごちゃごちゃとしたものが雑多に積まれている。
その中から瀧は長細い黒い棒のようなものを取り出した。
先の方は少し平べったくなっている。
(鞭だ…)
仰向けの春名には瀧の持っているものが見え、1人ぞくりとした。
身体が芯から震えてくる。
(夏原、あれでぶたれるんだ…。)
12歳を越えたら鞭を使われると聞いたことがある。
(夏原は俺のひとつ歳上だからまだ9歳なのに…すごいな…)
春名は仰向けでの姿勢でいることが急に恥ずかしくなってきた。
6歳くらいまでは膝の上や腕に抱えられた状態で尻を叩かれる、いわゆる“お尻ペンペン”のお仕置きだった。
それを卒業すると今の春名のように足首をバーにくくりつけられ、お尻を浮かした状態で尻を打たれるお仕置きになる。
これはこどもたちが逃げないようにするためである。
尻をぶたれることを覚悟し、逃げずにお仕置きを受けられるようになったとみなされれば壁を向いて尻を付き出す姿勢をとることになる。
より厳しいお仕置きを受けられることで、こどもたちは“認められている”と感じるのである。
今日の春名のように指導中に姿勢を崩し起き上がれなくなったため年少児のお仕置きの姿勢をとらされたことは屈辱でもある。
鞭の恐怖とは裏腹に比叡たち3人も春名も憧れのような気持ちを抱きながら夏原への叱責に耳をそばだてる。
「訓練中も言い訳ばかりだそうだな。調子に乗ってる場合じゃないだろうが!」
ヒュンッと鞭がしなる。
ビシィッ!バチィッ! バチンッ!ビチィッ!
バチンッ!ビシィッ!
夏原が打たれている間も2班の4人は尻を付き出したまま姿勢を保っていた。
「うっ!いっ!ごめんなさいっ!ごめんなさい!」
10回ほど打たれた夏原の尻には赤黒い筋が浮かび上がった。
額を逆さに伝った汗と涙がポタポタと床に落ちる。
ぜえぜえと夏原の息遣いが春名の耳に張り付く。
「夏原、身体を起こせ。」
「はひっ」
「明日も今日のように飛んでいたら承知しないぞ。」
「はい!」
「戻ってよし。」
「はいっ!隊長、ありがとうございました!」
夏原は涙混じりに叫んで部屋を出て行った。
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