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「思いやりねぇ…」
——リアムはちょうど店員が持ってきた酒を奪い取って、浴びるように飲み干した。
「もう帰る。君も、せいぜいやつらには気をつけることだな」リアムは、奥に構える連中をチラと見て囁いた。振り返ってみると、男たちは淫らがましい顔付きで、なにかヒソヒソと話し合っている。
「あなた、名前は?」
「リアムだ」
「私はマチルダよ。またいつか来てね」
リアムはその声に耳を傾ける間もなく、酒場を後にした。車道を挟んだ路を見ると、男たちが怒声を上げながら馬乗りになって殴り合っている。しばらく観戦していると、ある時形勢が逆転して、さっきまで殴られていた方が今度は馬乗りになって殴り返した。その背中には、鎌と槌のマークが見えた。おそらくあれは共産主義の回し者だろう。男は、留まる様子もなく、取り憑かれたように何度も何度も顔を殴っている。
リアムは、気味の悪い笑みをこぼした。
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