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「それにしても、これはいつまで続くのかしら。気づいたら知らない誰かになっていたなんて、はじめは驚きもしたけれど。娼婦、そのあとは乞食。あとは何だったかしら? さすがにもう飽きてきたわ」
聖女がため息をついてみせると、悪魔はさらに牙をむいた。
「馬鹿にしおって、飽きたのはこちらの方よ。私はお前を絶望させてやろうと、聖女に成り代わりたいと願う人間がいると中身を入れ替えてやった。だがお前は絶望するどころか、そのたびに妙な知恵をつけて、必ず聖女に返り咲いてしまう。娼婦になったときは何を学んだ? 男を籠絡させる手練手管か? そんなおまえが聖女だなんて、お笑い草よ」
聖女は何も言わなかった。
「だが、諦めぬぞ。すましたその顔を、必ず絶望に染めてやる」
「それは困ったわ。どうしたら諦めてくれるのかしら?」
「今言っただろう。お前が絶望するまで諦めぬと。だが、どうしたらお前のような女を絶望させてやれるのか……」
悪魔が考えあぐねていると、聖女はぽつりとこんなことを言った。
「いっそ悪魔にでもなってしまったら、さすがの私も絶望するかもしれないわね」
「なに?」
悪魔はそこではたと考えた。
たとえば私がこの女に成り代わってやったら、どうなるだろうか、と。
玉座にすわる聖女を見やる。
今回入れ替えた身体は決して整った容姿ではないが、悪魔の目にはとても美しくかがやいて見えた。
ああ、この身体を私のものにできたら、と欲がわいた。
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