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1. 序章
むかしむかし、あるところに、聖女のおさめる国があった。
聖女は民からの信頼も厚く、国はとても栄えていた。
しかし、聖女のことを快く思わない、ひとりの悪女がいた。
聖女のまとう服を見ては、
「私は必死に働いてもぼろしかまとえないというのに、あの聖女ときたら! いつもきらびやかな服を着て見せびらかして!」
と、罵った。
そして聖女が笑おうものなら、
「あの笑顔が憎たらしいわ! 自分の美しさをひけらかして、まったく醜いったらないわね!」
と、悪態をついた。
貧乏な自分とお金持ちな聖女。
美しくない自分と美しい聖女。
比べれば比べるほど腹が立ち、悪女は毎日のように、聖女の悪口を言ってまわった。
さて、類は友を呼ぶと言うが、そんな悪女のもとへ、とうとう悪い悪魔がやってきた。
悪魔は悪女に言った。
「そんなに聖女のことが気に食わないのか」
悪女はここぞとばかりに不満を訴えた。
「だって、私はこんなに働いているのに、家も服も何もかもぼろぼろ。でもあの聖女は、何もせずお城でさぞ贅沢な暮らしをしているのでしょう」
実のところ、真面目に働いているのは悪女の両親や兄弟たちで、自分は家でごろごろしていることの方が多い。
だが、そんなことはおくびにも出さなかった。
「ああ、一度でもいいから聖女になりたいわ!」
口からするりと出た悪女の願いに、悪魔は興味を持った。
「ほお、お前は聖女になりたいのか?」
「きれいな服を着て、みなの前でにこにこしているだけでいいのでしょう? それで贅沢な暮らしが出来るのなら、誰だってそう思うに決まっているわ」
悪魔は笑った。
「面白い。どれ、その願い、私が叶えてやろう」
悪魔がそう言うと、悪女はとたんに眠気におそわれ、意識を手放した。
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