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5. 終章
「ふん、なにがもとどおりだ」
玉座にすわる聖女を、悪魔は鼻で笑う。
「もとどおりどころか、お前は国をさらに大きくしてしまった!」
もともとはただの荒れ地だったところを、聖女は国を逃れた民たちと共に開拓し、新しい国を作った。
それはこの国のちょうど東隣にあった。そのため、聖女がふたたびこの国をおさめるようになるのと同時に、そのまま領地を広げるかたちとなったのだ。
「全て計算どおりというわけか? 聖女だなんてとんでもない。お前はとんだ策士だ!」
「あら、それは違うわ」
「なんだと?」
「別に計算していたわけではないのよ。あの悪女が国をめちゃくちゃにしてくれたものだから、私は民を連れて逃げなくてはならなくなったの。でも……」
農作業であかぎれだらけとなった手を見る。
「作物にも色々あるのね。不毛の地だと言って誰も住もうとしなかったあの土地でも、ちゃんと育つ野菜があったわ。あなたが私を悪女にしてくれたおかげで、そのことに気づけたの、感謝するわ」
「感謝だと!?」
悪魔は憤慨した。
人から感謝されるなど、まったく不名誉なことだった。
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