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二つ目の予定は、異国の使者との対談だった。
悪女はこれなら自分にもできると思った。紅茶とお菓子でもてなして、雑談をするだけなら簡単だろうと考えた。
しかし、使者を前にした悪女は一言も言葉を発せなかった。
それもその筈。
使者の話す異国語を、悪女は話せなかったのだ。
そのあとも予定は山積みだった。
歴史に始まり、法学、帝王学、軍事学。
歌にダンスに裁縫まで。
政に関係ありそうなものから、関係なさそうなものまで。
隙間という隙間が講義で埋められ、夜にはもうへとへとだった。
「こんなことを毎日していたら、死んでしまうわ」
悪女は一日で弱音を吐いた。
そこへ腰の低い家臣がやってきた。
「聖女さま、すべてひとりでこなされていてはお疲れでしょう。もしよろしければ、わたくしが聖女さまにかわって、ご予定をこなしてみせますが」
「おお、なんと素晴らしい申し出でしょう!」
悪女は大いに喜んだ。
そうして、すべての権限をその家臣へ与えてしまった。
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