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驚いた奏は、右手を振り上げてそのスズメを払おうとしたが、直前で止めた。流石に人の手で弾かれたら無事では済まないと思ったからだった。
スズメはそんな奏の動作に臆することなく話を続けた。
「なんか嫌な事があったんやろ。男か?男やろ。そうやろなぁ。目を見たら分かるんで。わいも長い事生きとるきいに。まあ話だけでも聞いたるき、もう一回そこ座れって」
奏の足の力が急に抜けて、立っていられなくなった。そのままもう一度ベンチに座る格好になる。
「お、意外と素直やな」
「ち、違う、ちょっとびっくりして‥‥‥」
意図せず返事をしてしまったが、それでも奏は未だに信じられずにいた。
その表情を見て、スズメはまだ疑ってるのかと睨みつけた。
「分かったわ。話を聞いてからと思っとうたけど、しゃあない、先に願いをかなえたるわ。したら信じてもらえるやろ」
何か願ったっけと思いながらスズメの方に首を向けた。スズメは両の翼を広げたかと思うと、奏の頬を挟み込み呟いた。
「わし、じゃなかった、我このものに変身の許可を乞う‥‥‥たあっ!」
次の瞬間、奏は一羽のスズメへと変貌を遂げていた。
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