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「え?なになに、これって」
「どうや、願いをかなえてやったで。って、まさかこの期に及んでハトが良かったぁなんて言わんやろな。まあ、何にでも変身させれるんやけどな」
スズメはその鳩胸を大きくのけぞらせ、自慢げに左右に振って見せた。
奏はその右の翼を大きく掲げ、その脇を覗き込むような仕草をした。左も同様に。そこでやっと、自分がスズメになったのだと気付いた。
夢でも見れるんだろうかと思ったが、すぐさまスズメが奏の頬を翼で打つ。
「痛っ!なにすんのよ」
「な、夢じゃないやろ」
スズメはしたり顔で奏を見た。
「ところで」
「ん?なんや」
「あんた、誰?」
何から聞いていいのか混乱しながらも、奏は恐る恐る聞いてみた。
「わしか?わしも元々は人間やったんや。あ、わしといっても鷲とちゃう、人間やで」
「‥‥‥」
「ここ、笑うとこや。って、笑う床屋じゃ髪は切れまへんがな。ガハハッ」
笑えない親父ギャグを連発するところから、奏は七十歳過ぎくらいの爺さんだと想像する。
「‥‥‥って、爺さんさっきどこ見てたのよっ!!」
「いやあ、久々にええもん見させていただきましたわ」
「ちょっと、あんたねえ」
いや、そんなこと言ってる場合ではないと、奏は我に返る。
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