運命の人

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「あ、ああ、原子力発電所………」  同じことを繰り返す私に、タケシは呆れたように言う。 「僕も君と一緒にテレビで見ていたから、そんなこと君に言われなくても分かっているよ。原子力発電所には君が心配しなくてももう先発隊が向かっているんだ。M博士の研究所で作られた2号と3号だ。ん? 皮のパンツはどこだ?」 「パンツ?」 「それじゃない。ズボンのことだよ」 「いやだ私。今だに下着のパンツとズボンのパンツの区別が………」 「いいか、イントネーションで区別するんだ。ってパが高くてツに向かって下がるのが下着のことで、って若干高音棒読みなのがズボンの方だ……おっと、今はパンツの区別なんて君に教えている場合ではない」 「あ、ごめんなさい。あ、お弁当を……」 「弁当? どこでいつ食べる。弁当持参で闘いに行くヒーローがどこにいるんだ。じゃあ行ってくる」 「あ、はい、気をつけて」  ──  彼は優しい。  毎日、こんなくだらない話にも付き合ってくれる。あ! 駐輪場で「変身!」の声が聞こえた。今日も誰にも見つからないで済んだかしら。見つかったら大騒ぎになるし、それにご近所迷惑になりはしないかしら。出来ればもっと人目のないところまで行ってからにして欲しいと思うのは、ヒーローに対しての理解のなさだろうか。  私も変身してもっと賢い女になってみたい。だって、IQ600の彼とIQ95の私に接点があるとしたら、それは相手を思う愛だけだもの。
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