運命の人

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 その日のテレビのニュースは当然、原子力発電所占拠事件一色だった。巨大なゴキブリ型の怪人はメディアによって「ゴキブーリィ」と名付けられたが呼びにくい。どうやら彼らの狙いは原子力発電所が保有するプルトニウムにあるらしい。 奴らはプルトニウムを盗んで原子爆弾を作ると息巻いている。  奪われたらとんでもないことになる。  タケシさん早く!  テレビは原子力発電所の防犯カメラの映像を流している。上手いことに悪の軍団と、タケシさんの後輩2号と3号が闘っているところが、バッチリきれいにカメラの枠に納まっている。闘いは今のところ五分五分といったところか。  なんとかキーック!   なんとかチョーップ!  ダメだ。  技の名前を知らない私に実況は出来ない。  しかしここで、国営放送のアナウンサーが叫んだ。 「あ! 1号が来たー! 我らが1号ー!」 「もう大丈夫です。国民の皆様。安心して下さい。1号です。1号が来ました!」 「頑張れー! 1号ー!」  凄い。  あの人、本当のヒーローだ。  なんだか、タケシさんが別人に思えて少し寂しい。    なんとかキッーック……  なんとかチョーップ……   「あっ! 1号が倒れました! ゴキブーリィの噴射した毒ガスが3号を庇った1号にかかった模様です。大丈夫か! 1号」
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