運命の人

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 ✳  運命の彼は私と同世代。  とても忙しい人だ。  "アミーゴ"のカウンターでたまに隣同士になって軽い世間話をしていた時にも、よく職場からアッ○ルウォッチに良く似た腕時計型端末に呼び出しが掛かって来た。 「こんな時間に職場から呼び出しですか?」  24時間営業の量販店にでも勤めているのだろうか。端末を操作する彼の鼻筋の通った横顔は、ハリウッドの映画スターみたいで素敵だった。思わず見惚れてしまう。 「ああ、話の途中で済まない。ちょっと手伝いがいるらしい。大丈夫、チャチャっと終わらせて来ますよ」  とんだ仕事人間だ。  呼び出しはしょっちゅうで、それが深夜であろうと彼は愚痴のひとつもこぼさずに、まるで飛ぶように店から出て行ってしまう。呼び出しを見越して彼はお酒を飲まないのかとずっと思っていたのだが、後で聞いた所によると、お酒は体質に合わないらしくて一滴も飲めないらしい。  下戸……良かった。
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