運命の人

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 当然ヒーローには敵がいる。  私があの人の彼女であることが敵である"悪の組織"に知れて、たとえ命を狙われることになってもそんなこと構わない。だけど、 けして闘う彼の足を引っ張る存在にだけは、なってはいけないのだ。例えば私が悪者に拉致されて人質になったりすること。 「香澄さん、彼と共に生きるには相当の覚悟がいるよ」  ハッと振り向くとマスターが白いものが混じる顎髭を指先でもてあそびながら、心配の上に困ったが乗っかったような表情をして立っていた。彼にだけ親しげに「おやっさん」と呼ばれるマスターは彼の正体を知っていたのだ。 「マスター、私出来ます!」  私は 自分でも驚くぐらい何の迷いもなくそう答えた。だけどその時はまだ彼への真っ直ぐな思いだけが先行して、何も分かっていなかったのだ。真のヒーローとは何か、ヒーローと共に生きるとはどういうことか……ということが。
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