運命の人

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 私たちは相思相愛になって間もなく、半同棲生活に入った。私の2DKのアパートでだ。彼の住まいには一度も行ったことがない。私たちの間にはまだ色んな壁があるけど、仕方がない。彼はヒーロー。巷やネットで圧倒的な人気を博す、みんなのヒーローなのだ。    "アミーゴ"のマスターから聞いたところに依ると、彼はIQ600もある超人であるという。その分かなり複雑な思考の持ち主だとも……。その辺に掃いて捨てるくらいウジャウジャいるような超凡人の私みたいな者が、いくら足掻いても彼の何もかもを知るなんて到底出来っこない。  彼をいくら愛しても彼は私だけのものにはならないし、このことは彼にもはっきりと言われた。 「それでも良ければ、僕も喜んで君とお付き合いがしたい」……と。 「平気よ。我慢出来るわ。ただ……私だけを愛してくれると約束してくれるのなら」  彼を愛する人は限りなくいるだろうけど、彼には私だけを愛して欲しかった。半分泣きながら彼にそう告げると、彼は、 「何も心配しなくていい。僕が愛するのは君だけだ」  そう言ってマスカラの混じっでいるであろう私の涙を指でそっと拭って、熱い口づけをしてくれた。
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