視界の端に蜘蛛がいた。

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視界の端を蜘蛛が走る。 たまたま視界に入ったというだけで、特別な意味はない。 手元を小さな蜘蛛がちろっと走った。 見間違いかと思って、その場所をもう一度見たら姿を消していた。 逃げ足の速いやつだ。私は気にせずにマウスを動かす。 右手の中に納まっているマウスがもぞもぞと動いている様な気がした。 右手の下にあるマウスから8本脚が生えていた。 いつのまにか、マウスが蜘蛛になっていた。 パソコンと繋がっているケーブルは口から出ていた。 大量の情報の波を泳ぐ。状況に応じて姿を変化させる。 人間よりもよほど優秀なカーソルだと思う。 やがて、蜘蛛は右手の親指に牙をつきたてた。 痛みを感じることもなく、脳漿が炸裂した。 流れてくる情報に脳が耐えきれなくなったのだ。 まあ、この変身は本当に意味はない。 ただ、蜘蛛がそこにいた。そいつがマウスになった。 それだけの話。
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