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「天城さん、まだ残られてて大丈夫なんですか?」
勤務終了の定時は一時間ほど前に過ぎている。
切りの良いところまで進めておこう、と圭亮がディスプレイ上のファイルをクリックしたときだった。
隣の席から、恐る恐るという感じで達大が声を掛けて来たのだ。
「ん? なんで?」
「お子さんが小さい人は、なるべく早く帰ってもらえるようにしてるって聞いてます」
彼の返答に、圭亮は少し驚く。
「え!? よく知ってるね。俺が子持ちだって」
「はい、課長に、……あ! あの、すみません、僕。プライベートのことに口出すのはダメですよね、あの──」
「そんなの気にする必要ないよ。家庭のことで融通利かせてもらう立場で、ある程度オープンにするの当然だから。配慮はしろ、でも一切触れるなって勝手過ぎるだろ」
大慌てで取り繕おうと焦っているらしい達大に、圭亮は敢えて軽い口調で返した。
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