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4
余命宣告から三か月。
私は意中の人と校舎の裏で向かい合っている。
帰宅を急かすチャイムを聞きながら。
「ずっと、好きでした」
この一言のために、今日ここにいるのだ。
「ありがと。……ごめん」
ああ、そうだ。きっとそうだと確信していた。
君はそう言うってわかっていたけど。
「うん」
それで、終わり。
彼の背中が視界から消えるまで、私はずっとそこに立ち尽くしていた。
深夜零時。
私は遊んでいたゲーム機から目を離した。
無性に外の空気が吸いたくて、窓を開ける。
夏の熱い夜風が部屋に流れ込んできた。
町の空気は美味しくないはずなのに、私はひたすら肺の中にそれを取り込む。
少しして満足した私は窓を閉めて布団に入った。
私はまたクジラになっていた。
誰もいない海の中を、一人泳ぐ。
寂しい。とても、とても寂しい。
そんな感情がぽーぅ、ぽーぅと口から漏れる。
ほとんど音のない海の中をさまよっていた、その時。
ぽおーぅ。
私の声ではない、誰かの声がどこからか響いた。
「どこ? どこにいるの?」
私も必死で応える。だけど相手の姿は見えない。
一つだけわかるのは、誰かは「こっちへおいで」と呼んでいるということ。
私はその声めがけて泳いでいく――。
眩しい光に包まれて目が覚めた。
眼鏡をかけて時計を確認すると、もう授業が始まっている時間だった。
――人生で一回ぐらいずる休みしたって、許されるよ。
私はそう決めると、再び夢の中へ逆戻りしたのだった。
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