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余命宣告から半年。 私の容体は急変していた。 「気をしっかり持って!」 救急隊員の人が心臓マッサージをしながら叫ぶ。 「嫌、死んじゃ嫌! 待って!」 父と母が半狂乱で私を呼ぶ。 ガラガラとけたたましく病院の廊下を進んで、扉をくぐる。 消えゆく意識を何とか保って、私は母に言った。 「お母さん、私ね、大丈夫だよ。クジラになるから。のんびり海を泳ぐクジラに――」 その直後。 ピ、と短い電子音の後、私の意識はとぷんと水に沈んだ。
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