第1話 『サプライズ』

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 俺は母子家庭だからといって、貧乏だったわけじゃない。  賃貸だが、人並みのマンションに住んでいた。  食事だって、栄養バランスのいいものをお腹いっぱい食べていた。  それに誕生日には、いつも欲しい物をくれた。  だが、そのプレゼントが曲者だった。  いつもなにかしら仕掛けがあるのだ。  ここで心温まるエピソードをひとつ紹介しよう。  小学校二年の頃、俺は最新のゲームが欲しかった。  誕生日前には、露骨にアピールした。  テレビでCMが流れるたびに、いいなぁ、とか、欲しいなぁ、とか。  これだけ言えば、どんなに鈍感な人間でもピンとくるはずだ。  下準備は完璧だった。  そして迎えた誕生日当日――9月9日。  目覚めると、枕元に大きなプレゼントの箱。  俺は飛び起きた。  急いで包装紙を乱暴に開ける。  この大きさからして、きっと欲しかったゲーム機だ。  だが、破った包装紙の隙間に見えたのは、明らかに別のものだった。  ただの超合金の玩具――その外箱だった。  がっかりした。  あんなに必死にアピールしたのに、母さんには伝わらなかったのだ。
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