第8話 『母の帰宅』

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 友達や恋人からRINEが来ているが、とても返事をする気分じゃなかった。  ただ画面の時計を見つめる。  23:30……0:00……0:30……1:00……1:30……そして、2:00。  ドッドッドッドッドッド……。  うるさいほど心臓が早鐘を打つ。  一分一秒がこんなにも長く感じるなんて思いもしなかった。  2:01……2:02……2:03  いつもなら眠気で目を開けていられない時刻だ。  なのに少しも眠くない。  ネカフェで数時間眠ったからだろうか。  いや、違う。  この家で眠ることが怖いのだ。  俺は考えた。  もしあの狂った状態の母さんが、俺の寝ている枕元にやってきたら……。  ブルッ!  思わず身震いした。  もしかしたら、そのまま目が覚めないかも。  ……ありえる。  あの状態の母さんならやりかねない。  そう考えると、眠ることなんてできない。  部屋の鍵なんて、ただの気休めみたいなものだ。  入ろうと思えば、バールの一本もあればいい。  そんなことを延々と考えていたら、車のエンジン音がした。 「お疲れさまでした、瑛子ママ」
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