7人が本棚に入れています
本棚に追加
「ご苦労さま。安全運転で帰るのよ?」
「はい、ありがとうございます! 失礼します!」
バタンと車のドアが閉まる音。
そして遠ざかるエンジン音。
帰ってきた。
母さんだ。
耳を澄ませる。
スリッパで歩く音。
冷蔵庫を開ける音。
ドアを開ける音。
とくに異常はない。
いつもの母さんだった。
俺は拍子抜けした。
と、同時に腹が立ってきた。
どうしてこの俺が、母さんごときに怯えなくちゃならないんだ?
体は俺のほうが比べ物にならないくらい大きいし、力だって強い。
喧嘩になれば、100%俺が勝つ。
なのに、こんなにビビるなんて、馬鹿らしい。
このまま下に行って、文句を言ってきたら、一発ぶん殴ってやろうか。
本気でそう思った。
だが、待て。
今の母さんはアルコールが入っているはず。
アルコールの力で、今朝以上に狂ってしまう可能性もある。
それに、酔っ払いは痛覚が麻痺してるから、ゾンビのように向かってくるかも。
俺はブルっと身震いした。
母さんと会うとしたら酔いが覚めた頃がいい。
つまり朝。
そうと決まれば、早めに寝るに限る。
最初のコメントを投稿しよう!