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第9話 『死ね、クソババァ!』
∮
「はっ!」
目が冷めて、壁の時計を見た。
午前8時20分。
はぁ!?
マジかよ!
完全に遅刻じゃねぇか!
「あのクソババァ!」
俺は昨日のことなど頭から吹っ飛んでいた。
怒りに任せて飛び起きた。
ガタッとベッドから何かが床へ落ちた。
昨夜握りしめていた金づちだ。
思わず拾って、壁に投げつけるところだった。
それほど俺は怒っていた。
7時半までに目覚めなかったら、母さんが起こし来る。
それが母親の仕事だ。
いくら喧嘩しているからといって、サボっていい理由にはならない。
急いで制服に着替えて、勢いのまま一階へ駆け下りた。
大義名分は、俺にある。
正しいのは、俺だった。
リビングに入ると、コーヒーの香りがした。
母さんは、そこにいた。
開口一番、俺は叫んだ。
「おいババァ! なんで起こさねぇんだよ!」
母さんは、いつものようにソファーに座り、いつものようにコーヒーを飲んでいた。
ただし、コーヒーカップは、いつものカップではない。
それは、俺が子供の頃に、母さんの誕生日にプレゼントしたカップだった。
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