7人が本棚に入れています
本棚に追加
思わず顔がほころんでしまいそうになる。
俺の知る限り、母さんが俺のプレゼントしたカップでコーヒーを飲むのは、初めてのことだ。
だが今の俺は怒っているのだ。
ガツンと言わなければならない場面である。
俺は無理矢理に息を荒げながら、母親の言葉を待った。
当然、謝罪の言葉をだ。
その予想は、だが裏切られた。
「どうして私が起こさなきゃならないのよ」
俺に顔を向けること無く、母さんは言った。
あまりに意外な言葉だった。
俺は言葉を失った。
だがすぐに気を取り直して、叫んだ。
「テメェが母親だからだろ!」
対して、返ってきた言葉は、またしても意外なものだった。
「違うわね。もう私はあなたの母親じゃないわ」
「ふざけんな! お前は母親だろうが! 意味わかんねぇこと言ってんじゃねぇ!」
「昨日まではね。今日からは違うのよ。私はあなたの母親を降りたの」
「母親を降りただと!? そんなことできるか、ボケ!」
「あら、どうしてかしら? 法律で決められている義務教育は中学までなのよ?」
「くそっ! 時間がねぇ! 続きは帰ってからだ! ――おい! 飯はどうした!?」
最初のコメントを投稿しよう!