第9話 『死ね、クソババァ!』

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 思わず顔がほころんでしまいそうになる。  俺の知る限り、母さんが俺のプレゼントしたカップでコーヒーを飲むのは、初めてのことだ。  だが今の俺は怒っているのだ。  ガツンと言わなければならない場面である。  俺は無理矢理に息を荒げながら、母親の言葉を待った。  当然、謝罪の言葉をだ。  その予想は、だが裏切られた。 「どうして私が起こさなきゃならないのよ」  俺に顔を向けること無く、母さんは言った。  あまりに意外な言葉だった。  俺は言葉を失った。  だがすぐに気を取り直して、叫んだ。 「テメェが母親だからだろ!」  対して、返ってきた言葉は、またしても意外なものだった。 「違うわね。もう私はあなたの母親じゃないわ」 「ふざけんな! お前は母親だろうが! 意味わかんねぇこと言ってんじゃねぇ!」 「昨日まではね。今日からは違うのよ。私はあなたの母親を降りたの」 「母親を降りただと!? そんなことできるか、ボケ!」 「あら、どうしてかしら? 法律で決められている義務教育は中学までなのよ?」 「くそっ! 時間がねぇ! 続きは帰ってからだ! ――おい! 飯はどうした!?」
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