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「朝ご飯? とっくに食べ終わったわよ?」
「は!? 俺の分はどこだよ!?」
「あるわけないじゃない」
「じゃあ作れよ! 今すぐ!」
「はぁ……だから、どうしてあなたの分を作らなくちゃならないのよ? 母親じゃあるまいし」
母さんはため息を吐いた。
絶対に意思を曲げないと決めたときの母さんの癖が、このため息だ。
つまり、今まで言ったことは全部本気ってこと。
絶句する俺。
母さんは立ち上がる。
そして手に持ったカップを傾けた。
ジョボジョボジョボ……。
ベージュ色のラグに、黒いシミが広がっていく。
何をしてるんだ……。
気が狂ったのか?
唖然とする俺。
ここへきて、母さんは、ようやく俺の顔を見た。
「こんなにマズいコーヒーを飲んだのは生まれて初めてだわ。せっかくの高級な豆が台無しよ。このクソ趣味の悪いカップのせいでね」
そう言うと、カップを床へ叩きつけた。
ガシャン!
大きな音を立てて、カップが砕け散った。
俺が母さんにプレゼントしたカップが……。
まるで昨日の再現だった。
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