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英理は繁華街を引き返して母を探し、あるカフェの中に見つけた。窓に背を向けて座る母の正面には男がいた。父ではない知らない男。英理は通過し次の角まで来て止まった。どういうこと? だれ? 父の会社は街と海浜エリアのあいだにある。自動車関連のエンジニアだった。昼休みにこの街まで来てママとランチ――そんな空想をしたが違った。 どうしよう。 街角で誰かを待つふりで英理は考えた。どうする? どんな知り合い? なんでもないただの知り合いかもね。でもだったらなぜ内緒に? 今朝ウソをついた。心配をかけまいとしてかもしれない。ただの知り合いだし。でも説明すると長くなる。心配ないんだからわざわざ言わない。あるある。 LINEで今どこにいるか聞いてみようか。でも今朝と同じ嘘をつくかも。つかれても「ウソ」とは言えない。こっちがカマをかけたようになる。それに「ウソ」とツッコめばママを追いつめる。やめよう。    *** 12月29日に電子書籍(AmazonKindle)を発売しました。
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