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じゃあリアルに声をかけるのは? たまたま通りがかって見かけた。偶然を装って――それなら嘘はつかせない。でも今朝の嘘は指摘する。そして私の嘘もバレる。いやいや、そんなこと言ってる場合? ママは驚くだろう。動揺するかも。さらにギコチなかったら? 相手について誤魔化す感じだったら――不倫とかそういうこと? まさかね。ママがそんなことしない。普段のママを見たら想像つかない。 でも、今朝は嘘をついた。 カフェから母と男が出てきたのは20分後だった。ふたりは一緒に歩き繁華街を抜け、英理は周囲にも気づかれぬよう尾行した。どこに行くんだろう。習い事とかかな。何か始めたなんて聞いてないけど、その先生とこれからその教室に行くのかも。 ふたりを見失ったのはスクランブル交差点だった。赤で止まった母が周囲を見まわし、英理は街路樹に隠れて背を向けた。深呼吸して動悸を鎮め、それから背後を窺うとふたりの姿はなかった。青信号で人々は動き出していて英理はその雑踏を縫って急いだ。こっちを向いて信号待ちしてたんだからきっとこっちにいるはず。 そう踏んで曲がった角の奥にラブホテルがあった。母と男はそこに入った。    *** 12月29日に電子書籍(AmazonKindle)を発売しました。
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