la Pucelle d'Orléans

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la Pucelle d'Orléans

 カトリーヌ・ダルクは目を開けた瞬間から、今日も平凡な一日が始まるのだろうと予期していた。いや、これは諦めと言う方が近い。農家の娘の毎日など、ほとんど決まっているようなものだからだ。小さな部屋の、更に小さな窓から、ぼんやりと遠くを見つめる。その後はすぐさま着替えを済ませ、母の手伝いに精を出す……はずだった。 「カトリーヌ! 早くご飯の準備をして!」  狭いキッチンへ向かうと、母が忙しそうに鍋をかき回している。朝食を取るのはいつものことだが、その量は普段の二倍、いやそれ以上はあった。 「お母さん、何でこんなに朝ご飯を作っているの?」  カトリーヌは不思議そうな顔をして、そう尋ねる。この家には彼女の他に、父と母、三人の男兄弟がいるが、こんなに豪勢に作るのは滅多にないことだった。 「全く、あんたは何を言ってるんだい!」  変な疑問をぶつける娘に、母は呆れ気味に返事をした。まるで「何を当たり前のことを」と言われたような気がして、カトリーヌはますます首を捻る。 「だって、おかしいじゃない。こんなに沢山の量、まるで誰か一人増えたみたいよ」 「……その様子だと、まだ寝ぼけているみたいね。ほら、さっさと手伝って!」  パンパンと手を叩かれたカトリーヌは、未だに腑に落ちないとは思いながらも、渋々パンの置かれた方へ向かった。口当たりの固い、ボソボソとしたパンを、ナイフで切り分けていく。自分を含めて六人分、いつもと同じ個数だ。 「あんた、それじゃ一人分足りないじゃない! 六つじゃなくて、七つだろ?」 「七つ? どうして?」 「どうしてって……。おかしなことを言うもんだねぇ……」  ……カトリーヌには、母の言うことが理解できなかった。おかしなことを言っているのは、母の方ではないか。そう反論しようとした矢先――。 「おはよう! 今日もいい朝ね!」  ――カトリーヌの後ろから、明るい声が聞こえてきた。父でも兄弟でもない、可愛らしい少女の声。その気配を感じた刹那、彼女は思わず心臓が止まりそうになった。聞き間違いか? いや、そんなはずはない。後ろの少女は、間違いなく……。 「ジャンヌ! あんたも支度を手伝いな!」 「分かっているわ、お母さん」  ……彼女にとってのかつての姉、ジャンヌだった。
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