偽善者

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 僕は立ち上がって、子供らに近づいて(そもそも一メートルほどの距離しかなかったが)言った。 「あ、邪魔だから。どいて」  その通りで、子供らはちょうど扉を塞ぐようにして立っていた。すいません、などと言って子供らはどいた。僕は出るために扉に手を掛け、開いた。と、そこで、一言だけ言いたくなって言った。 「あ、そうそう。文字、分かる?黙浴って書いてあるの」  そう言って僕はサウナを出た。
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