無害な殺人鬼 ――私と彼は似て非なるもの――

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     翌日の夕方。  仕事が終わっても私はまっすぐ家に戻らず、街外れの寂しい区域に立ち寄っていた。研究開発中の新魔法がうまくいかず、むしゃくしゃしていたからだ。  かつての住民も賑やかな中心街へ移ってしまい、もはや誰もいないエリア。廃墟と化した建物は静かで、その間を歩くだけで、少しは心が落ち着く。  しかも人目につかない場所だから、私独特のストレス解消法を実行できる。  研究塔からこっそり持ち出した、動物実験用のシロネズミ。それを鞄から取り出して……。 「メタモルフォーゼ!」  変身魔法により、人間に変えてしまう! 「わ……。みゃ……」  声にならない声を出す、元シロネズミの人間。人間らしく二本足で立つことはできないし、急に体が大きくなったため、四足歩行にも苦労している。  そんな中途半端な生き物に近寄って……。  手にしたナイフで、その喉笛を掻き切る!  プシューッと血を噴き出しながらそいつが死ぬ様を見て、私はスーッと気持ちが楽になるのだった。  素晴らしいストレス解消法!  人殺しの感触を楽しみながら、でも実際に殺したのは小動物。だから、私の心は痛まない。適性検査に引っかかることもない。  死んでしまえば姿は固定される、という変身魔法の特徴を利用した、賢いやり方だ。  私の想像では、ジョンも似たようなことをしているはず。ただし私とは逆で、戦場で人間をモンスターに変えて、他のモンスターに紛れさせて殺すのだ。彼自身は「モンスターを殺害」という意識だろうが……。  ジョンの場合、元は人間だった者が死ぬことになるから、私とは大違い。私と彼、どちらが無害な殺人鬼なのか、考えるまでもないと思う。 (「無害な殺人鬼 ――私と彼は似て非なるもの――」完)    
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